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09/11/08(日)02:43:24 No.73446535 del「ありがとう」 「あなた、いつも『ありがとう』って言うのよね」 寝室の花瓶に花を活ける妻に謝意を告げると、彼女は今更ながらに不思議そうに首を傾げた。 「お礼代わりに『ごめん』って言う人だっているのに、あなたはいつも『ありがとう』」 僕に向けられる彼女の皺だらけの笑顔は、しかし涙をこらえた悲壮な笑顔だった。
最期の時は、我が家で――彼女の隣で迎えたい。それは僕の最後の願いだった。 「だって、僕の命が有限で、君に伝えられる言葉にも限りがあるのなら、できるだけ多くの『ありがとう』を伝えたいじゃないか」 かすかに残った気力を振り絞って、言葉を続ける。 「出会ってくれて、ありがとう。選んでくれて、ありがとう。一緒にいてくれて、ありがとう。笑ってくれて、ありがとう」 彼女の笑顔が崩れる。泣かせたかったわけではないというのに、この期に及んで「彼女は泣き顔まできれいだ」なんて思ってしまうのだから、もう救いようがない。 「最後に一度だけ――」 僕は「愛してる」という言葉で伝えるよりも多くの愛を、彼女に伝えることができただろうか。
「ここでさよならで、ごめん」 |