レス送信モード |
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あと30分くらいで着くよ。
初音から送られてきたメッセージを確認して、祥子は手を止めた。明日までに事務所へ送る予定の企画書は概ね完成している。少しだけ気を緩めて同居人を待つ。玄関のそばに軽やかな足音が聞こえた気がして、迎えに行く。
「おかえりなさい、初音」
「ただいま、さきちゃん」
… | 125/05/13(火)02:28:22No.1312091060+初音の香りに安堵を覚える。空気が柔らかく感じるのはそれだけでなく、この体を縛る責任と緊張が弛緩したせいだろう。祥子にとっても心を許した相手との暮らしは久々だった。それぞれの場所で夕食を済ませたので、祥子はすでに入浴も終え部屋着だ。 |
… | 225/05/13(火)02:29:08No.1312091124+初音の戻るころにあわせて日課の支度をする。寝る前に、初音が祥子の髪を櫛で梳かすのだ。ソファに掛けた初音の脚のあいだ、フロアにクッションを置いて、小柄な祥子がおさまる。初音は慣れた手つきで祥子の髪を磨き上げた。永遠にも感じられるような静寂が部屋に生まれ、豊かな時間が過ぎる。 |
… | 325/05/13(火)02:30:38No.1312091270+初音は有り余るほどの美点を持っているのに、神は彼女の生に苦難を与えた。否、それを与えたのは神ではないかもしれない。二重三重の苦しみには豊川の人間が絡んでいるではないか。あの日、私があなたと初華を正しく見ていたら、あなたはどうなっていたの。私たちはどうなっていたのかしら、初音。 |
… | 425/05/13(火)02:31:16No.1312091334+「初音は、」言い淀む。振り返る初音は続きを待つ。 |
… | 525/05/13(火)02:32:00No.1312091403+日課を終えて、二人はそれぞれの時間を過ごす。 |
… | 625/05/13(火)02:32:53No.1312091475+『Imprisoned XII』は、Ave Mujicaの楽曲としてテーマを共有する前に初音から届いた(性格にはにゃむの手により知らしめられた)ものだった。あの頃の祥子はこれを愛の歌だと思い、戸惑いを覚えた。 |
… | 725/05/13(火)02:33:23No.1312091532+美しい初音、狂わされた子ども。幼子にはあまりに複雑な環境、感受性による助長、周囲の目、親から向けられる平等な愛ですら彼女を苦しめただろう。しかし今や初音は狂った自分と向き合っているのも確かだ。それが正しいか否か、祥子には決められない。しかし、祥子はひとつの解を得た。初音が祥子に向けている感情は愛だけではなく、信仰ではないか。だから触れないのではないか。初音はあのステージの上で、届かないことを既に認めていたのだ。あのときの祥子は意味を咀嚼できずに視線を反らした。 |
… | 825/05/13(火)02:34:35No.1312091632+浅い眠りから目を覚ますと部屋にはコーヒーの香りに包まれていた。この香りはいまでも好ましくない。しかし、コーヒーを好む初音のことは離れるのが恐ろしいほどに、大切に思えた。 |
… | 925/05/13(火)02:35:09No.1312091682+〜糸冬〜 |
… | 1025/05/13(火)02:52:36No.1312093069そうだねx1なぜ深夜にこんな良文を… |
… | 1125/05/13(火)04:44:33No.1312097550そうだねx1すげえよかった… |
… | 1225/05/13(火)05:08:04No.1312098286+>バンドを守るために書かれた詩 |
… | 1325/05/13(火)05:08:23No.1312098300+朝からいいものを見た |
… | 1425/05/13(火)05:15:46No.1312098554+最高だった… |
… | 1525/05/13(火)05:23:39No.1312098835そうだねx1>あなたのように狂いながら、美しく在ることを、無力なひとりの人間であることを、私は認められるのです。 |
… | 1625/05/13(火)05:57:32No.1312100094+なぜこんなところにこんな綺麗な文を… |